MF文庫さんから連載中の学園頭脳ラノベ『ライアー・ライアー』の5巻が発売となりました。
伊藤美来さんや鬼頭明里さんなどの人気声優さんのCM起用効果もあり、評判も右肩上がりのライアー・ライアー。
今回は5巻を読んでみてのレビューを書いていきます。
評価
恋愛頭脳バトル!?
『ライアー・ライアー』の魅力は計算されたシナリオと、主人公無双による爽快な読み心地にあります。読み始めると止まらなくなります。
今回もその長所は引き継いでいるのですが、今までとはドキドキの「質」と言いますか、作品の毛色が違いました。
篠原緋呂斗は成り行きで彩園寺更紗と《決闘》することになります。そういえば、緋呂斗と更紗が直接対決するのは1巻以来でしょうか。
ただ、《決闘》の内容が特殊で、それは依頼人の恋愛トラブルを解決すること。あらすじだけ聞くとよく分かりませんよね。
たとえば、依頼人に片思いの人がいて、依頼人が出す課題を緋呂斗が先にクリアすれば緋呂斗の勝ち。反対に、妨害して不達成にさせれば彩園寺の勝ち。
別の勝負では、依頼人がある恋愛トラブルを抱えていて、それを先に解決してあげた方の勝ち……みたいな感じです。
3本勝負で、先に2本取った方の勝利になります。
ちなみにこの《決闘》には星の移動がありません。そういう意味でも、今までの《決闘》とは特殊なものとなりました。
小休止だけど重要な5巻
五月期交流戦《アストラル》で登場した枢木千梨や他のキャラクターも再登場します。
アストラルはピリピリしたムードでしたけど、本作では好敵手たちの日常的な素顔が見れてほっこりします。とくに枢木千梨のギャップは凄まじかったりします。
アストラルの山場を乗り越えた5巻は「箸休め」的な回ですが、6巻以降につながる伏線が含まれている重要な回でした。
考察
本書の意義
5巻には大きく3つの意義があったと思います。
①ヒロインの可憐な一面をたっぷり見せる
②読者に幼馴染の存在を思い出させる
③次巻への伏線を散りばめる
①については文句なしですよね。クールで澄まし顔ですが時折ドキッとする台詞を言う姫路に、恋愛免疫がなくて嫉妬の炎を燃やす彩園寺。
浅宮七瀬も乙女で可愛らしいシーンが随所にあって、幼馴染であり生徒会長でもある榎本進司にもめちゃくちゃかっこいい台詞がありました。
本書ではいわゆるダブルデートの展開もあるのですが、定番の恋愛イベントも「嘘」が絡むだけでこうもワクワクしながら読めるんだなぁって思いました。
次に②についてです。
アストラルや倉橋御門の陰謀によって忘れがちになりますが、篠原緋呂斗が学園島に来た理由は幼馴染との再会です。
今回のメインテーマである恋愛相談の《決闘》は、その幼馴染を名乗る人物からの挑戦状でした。
5巻によって読者の意識の水面に幼馴染の存在が浮上したことと思います。
夏の大規模イベント開催
霧谷凍夜と柚葉によって示された次なる指針――それは、夏に開かれる大規模イベント。
まだ詳細は不明ですが、文面から察するに、アストラルよりも規模の大きい催しになるみたいです。
夏のイベントということで、個人的には水着回があったら嬉しいな~って思ってます。
休憩時間にビーチで戯れる様子でもいいですし、水着着用の水上《決闘》などもあったら一層うれしいです。
なにより、konomi先生が描くヒロイン達の水着挿絵や表紙、タペストリーなどが拝みたいです。
お風呂回もありましたので、次はどうか水着回をよろしくお願いします!
幼馴染の正体についての考察
――篠原緋呂斗は、すでに探していた幼馴染と再会している。
5巻のラストで明かされた衝撃の発言。結論、今の段階では正体は掴めないのですが、現時点で判明している情報を整理してみたいと思います。
まず、1巻のレビューの時に、幼馴染は今後のキーパーソンとなる人物なので既に(1巻の段階で)登場している可能性がある、と私は記事で書きました。
1巻で登場したメインキャラといえば、もちろん姫路白雪と彩園寺更紗ですね。読者の皆様も、この二人のどちらかが幼馴染だったらいいなと考えている人も多いと思います。
「いやいや、姫路も彩園寺も学園島に来てから出会ったんだから違うでしょ」という意見は、5巻によって否定されることになります。
なぜなら、生粋の学園島生まれ→育ちの生徒は稀で、ほとんどの生徒は才能を見込まれて本土から渡ってくると明言されているからです。
姫路も彩園寺も、昔は本土で暮していたと話しています。
つまり、緋呂斗は幼い頃に姫路と彩園寺のどちらか、あるいは両方と会っていたかもしれないのです。
これを踏まえて幼馴染を推理してみましょう。
幼馴染は「朱羽莉奈」説
5巻の表紙の子は朱羽莉奈であり、本物の彩園寺更紗ではありません。莉奈は更紗に普通の学校生活を過ごさせてあげたいという思いから、自分が偽物の彩園寺更紗にすり替わり、本物の更紗を本土に逃がしてあげました。
これは莉奈の口から語られた内容です。この全てが嘘ではなくても、一部の事実が歪曲させられているかもしれない、と考えたのです。
結論――莉奈は本物の彩園寺家の跡取りになるべく、学園島に迎えられたのではないか。
学園島で生まれ育った彩園寺更紗。彼女には、というより、彩園寺家には悩みがありました。更紗の学力や才能が平凡だったということです。
彩園寺家は学園島の中枢であり、更紗は将来の星獲りゲームで名を馳せる予定でした。なので、次世代のエースの実力が伴わないというのは彩園寺家の面目上マズイのです。
そこで、彩園寺政宗は本土から優秀な人材を探したのです。白羽の矢が立ったのが朱羽莉奈でした。学力も申し分なく、もしかしたら、幼い頃からすでに鋭い観察眼や洞察力の頭角を現していたのかもしれません。
そんな非凡な才能を買われて、彼女は学園島に招待された。
聞けば、ほぼ軟禁状態にあった本物の更紗に会える”友達枠“という人間が存在しました。あれは、彩園寺家にとっては「跡取り候補」を示す言葉であり、更紗にとっては「この人なら私の代わりを任せられる」と太鼓判を押せる後任探しの言葉だったのではないでしょうか。
ちなみに、更紗の「更」という漢字には、「新しくなる・代わる・入れ替わる」などの意味が含まれますし。
莉奈も外出の機会はほとんどなかったと言っていましたが、少しは外で遊ぶこともあったはずです。その時に偶然、緋呂斗と出会った。しかし、急に学園島への引っ越しが決まってしまい、二人は離れ離れになりました。
幼少の頃の思い出ですし、莉奈と遊んだのも数える程。もしかしたら、当時すでに、莉奈は更紗の代わりになることを周りから伝えられていて本名を口外することを禁止されていたのかもしれません。だから、緋呂斗には幼馴染との思い出も、彼女の名前に関してもほとんど記憶が無いのです。
そもそも彩園寺更紗は存在しない説
上記の考察と似た仮説として、最初から彩園寺更紗なんて人間はいないという大胆な説も考えました。
彩園寺家は世継ぎに恵まれなかったのです。
従来から質実剛健の人材を輩出し、今後は星の等級システムによって覇権を握ろうとしていた彩園寺家にとって、跡継ぎがいないというのは致命的な問題でした。
あとは先ほどの仮説とほぼ同じです。”友達枠”=”彩園寺家の跡継ぎ候補”と称して、ふさわしい人材を探し求めました。
本土に住んでいた才色兼備の朱羽莉奈が適任だという話になり、彼女は養子として学園島に迎えられたという仮説です。
姫路白雪の過去
朱羽莉奈が彩園寺家によってヘッドハンティングされたのならば、姫路は誰にスカウトされたのか?
ここも根拠一切なしの想像・とんでも理論で語りますが、結論から言えば、姫路を学園島に招いたのは一ノ瀬棗学長なのです。
ずっと引っかかっていたのですが、そもそも白雪ちゃんはなんで《カンパニー》の長なんかやっているのか。そして、いつからやっているのか、という点です。
彼女は彩園寺家に仕えるという理由で、幼い頃からメイドの教育を施されてきました。多分このメイド業によって、料理や家事などのスキルだけでなく、《カンパニー》が普段やっているような通信機器の操作などの知識も刷り込まれたと思われます。
ここからは憶測です。
彩園寺家と姫路家は、いわば本家と分家のような関係にあり、一ノ瀬学長も姫路家と何かしらの接点があった。彼女は彩園寺がこれ以上「力」を持つことを懸念していました。
なぜなら、一ノ瀬学長は英明の黄金期を築いた立役者の一人だからです。以前の英明は他者を寄せ付けない圧倒的な実力校でした。しかし、この世の全ては栄枯盛衰。英明の時代は終わります。
それが自然消滅だったのか、あるいは何かがきっかけとなって英明の弱体化を招いたのかのかは定かではありません。
しかし、一ノ瀬も、そして本巻で登場した柚葉も、英明の再起を願ったのです。
8ツ星を輩出した学区の学長は何かしらの特典が受けられるという噂がありますが、一ノ瀬は金や権力に固執するタイプには見えません。
柄ではないですが、英明をもう一度輝かせたいという純粋な願いも持っているはずです。
そんな彼女にとって、島を牛耳る彩園寺家と更紗の存在は脅威でしかありません。むしろ、英明の黄金時代を終わらせた元凶が彩園寺家かもしれません。そうなったならば両者は因縁の対立になります。
そこで、更紗(朱羽莉奈)の監視役として姫路を送り込んだのです。莉奈を牽制し、情報を流す《スパイ》役として。
自分の使命を全うするために白雪は莉奈と一定の距離を保っていました。5巻でも、最初の頃は莉奈と白雪の仲はそれほど良くなかったと語られていましたね。
でも、日々接するうちに白雪にも情が湧いてきます。彼女にとって莉奈は大切な”お嬢様”になりました。すると、自分の野望の為に他人を駒扱いする一ノ瀬にストレスが募ります。
白雪は一ノ瀬学長を「女狐」と呼んで敬意を払いません。二人を取り巻く険悪なムードは、そういう鬱積した感情が起因するものと思われます。
しかし、一ノ瀬の未来設計図はここで終わらなかったのです。
彼女は同級生の柚葉から弟(篠原緋呂斗)の話を聞いていました。一度は終焉した英明ですが、優秀な柚葉の弟が入学してくれば再び英明をトップに躍らせられると考えたのです。
でも、緋呂斗には思考力における光るモノがあっても、とりわけ学才に秀でているわけでもない、平凡な生徒。必ずサポート役が必要になると一ノ瀬は判断しました。
未来の緋呂斗が英明を一位に導けるように、その時に彼を助けられるように、そこまで踏んで一ノ瀬は白雪に決闘スキルやイカサマの類などの鍛錬を積ませたのではないでしょうか。
こんな感じです。他にも「彩園寺更紗は双子で、本土の更紗と時折入れ替わっている説」など色々考察があるんですけど、どれも憶測の域を脱しませんし、記事の文章量もそれなりになってきたので、今回はここら辺で筆を置きます。
長々とお付き合いいただきまして、ありがとうございます。
それでは、また次の記事でお会いしましょう!
コメント