『ソーサレス*アライヴ』

異世界モノには疎い私でもサクサク読み進められる作品でした。特に後半に入ってからは止め時が見つからず、没頭してしまいました。そんなソサアラから個人的に印象に残った内容をまとめたいと思います。いつも通りクリア前提となっておりますので、未プレイの方はご注意ください

■ソーサレス編■

ツンデレだけど気高いアキナ、いつも温和なアズーリア、ムードメーカーのミアにクールなユズリハ。色の違うヒロイン達が物語の上でよく噛み合っています。個別ルートに関しては、例えばアキナでは受け継がれる伝統と騎士道について、アズーリアの場合は一夫多妻制を常識とする社会での婚約の在り方など、いずれもこの世界観に根差した内容になっています。

後半のインパクトが強いせいか、ソーサレス編の感動が希薄になりがちですが、読み返してみると、なるほど後編につながる伏線が幾つも登場します。魔族や魔女の落とし子などの重要な情報はもちろん、「異なる世界なのになぜ共通する文化が存在するのか」や、「アキナの恋愛小説の趣味」なども細かい伏線のひとつだと理解できます。長い物語ですが、ぜひ複数回プレイしたい内容です。

その中でもやはりユズリハ√は最もシリアスながら一際輝きを放っていると言えるでしょう。

ユズリハは魔族(物語ではと見なされている存在)や罪人の血をひいているというレッテルを貼られ、いつも後ろ指をさされる人生を歩んできました。そんな彼女を仲間たちが快く迎え入れてくれるシーンには心が温かくなります。ただ、頭で理解していても心がついていかないのが大衆心理の弱い所。悪い噂が流れると多数派の意見に合わせ、脅威に対しては排他的になる。そういう人間の弱い部分もちゃんと書かれてあります。

それでも、ラストでユズリハは真実と愛を知ります。辛いことばかりだった人生で最も報われた瞬間でしょう。グランドエンディングに負けず劣らずの感動を与えてくれます。

加えて、姉のクレハにも注目したいところです。

ユズリハ√のクレハは、その言動上、かなりの悪役として描かれています。彼女はずっと父親からの寵愛を羨望していましたが、父親の心はユズリハの実母に向けられていました。また、テキスト上では言及されていませんが、そのような環境でクレハの母親の精神状態が穏やかではなかったことは容易に想像できます。本編ではしばしば「こちらの世界」と「異世界」における価値観の違いが指摘されています。が、両親からの愛というのは古今東西、たとえ異世界であっても変わりません。最終的にクレハは「復讐」の道を選んでしまいますが、愛の飢えが彼女の生きる方向性を捻じ曲げてしまったと考えれば、クレハに感情移入する動機には充分だと思います。クレハの事情も含めて、トータルでユズリハのシナリオは好きでした。

■アライヴ編■

ここからがソサアラの本領です。割と文量がありますが夢中になってプレイしてしまいました。本作では『運命』がひとつ重要なキーワードになります。運命を語る作品・セリフはそれこそ無数にありますが、本作を最後までプレイすると、その言葉の重みが実感できます。その結末はぜひ皆様自身の目で確かめてみてください。

①歴史とは

『魔女の落とし子』の一件で、王政が歴史を修正したという説明がミアからありましたね。歴史=過去の出来事の記述ではありません。繰り返される戦闘と駆け引きの勝者や、時の権力者が作った時系地図が歴史です。不都合な真実は隠蔽され、事実は歪曲されます。幼い頃から教育を施され、周りにも同じ知識が共有されれば、それは真実となってしまいます。これは古今東西どこでも起きていることです。

本編でも、主人公のコウキが真実を知った世界と、知らなかった世界の両方が描かれています。頭の柔らかいコウキは多少の混乱があっても、その事実に理解を示します。しかし、現実はそんなに簡単ではありません。人は真実を知りたがりますが、同時に自分の有している知識も真実だと思いたくなる動物です。自分と対極に位置する存在に理解を示せないのが自然です。そして、それはこの世から争い事が無くならない理由のひとつかもしれません。

真実の追究は難しいですし、そもそも真実の有無も保証されていません。しかし、そこで思考を止めるのではなく、考え続け、時に受け入れる優しさの意義を教えてくれているのかもしれません。

②感情の矛先

仲間を信じることができなかった世界。かつて愛を深め合った記憶があり、友情を築くことができた可能性があっただけに、このシーンには胸を締め付けられました。人間は豊かな感情表現を武器にして文明を発展させ、コミュニケーションを充実させてきました。逆に、復讐や怨念、嫉妬などの黒い感情は争いごとなどの引き金として人類に牙を剥いてきました。

ラストも非常に感動的なシーンでした。様々な不運な巡り合わせがあったとはいえ、その根底にあるのはやはり人の「感情」です。悲しいことに、理性と本能を天秤にかけて、然るべきでない時に本能が優先される未来もあります。領国や学院を守護するよりも、復讐心に駆られてしまったアキナのように。

歴史は人間が作り、人間は感情に支配されます。感情が幸せな未来へ導く一方で、醜い争いや、寂しいすれ違いも生んでしまうのです。

■最後に■

「転生」と「運命」を軸にした『ソーサレス*アライヴ』その中でも、「人間」と「歴史」について改めて考えさせられる良い作品でした。ユズリハ√も含め、アライヴ編も、エンディングも私の好きな要素が詰まっていました。中にはプレイしていて、「あっ。たぶんあの作品の影響を受けてるな」と垣間見える部分もあり、思わず頬が緩む場面もありました。プレイしていて楽しいですし、メッセージ性もあるので、ぜひ遊んでみてください。今回はこの辺で筆を置きたいと思います。ご精読ありがとうございました。

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