Summer Pockets 感想&考察

Summer Pockets OP

こちらは、Keyから発売されましたSummer Pockets(サマポケ)のレビュー・考察記事になります。

作品全体の評価や、自分なりの考察を目的としています。

本記事の流れは以下の通りです。

  1. 共通ルート・個別ルートの感想
  2. 鏡子さんや影法師の考察
  3. Summer Pockets全体の評価

*今回はがっつりネタバレを含みます*

 

共通ルート

Summer Pockets 共通ルート

プロローグ~個別ルートまでをプレイしてみての感想です。

選択肢と分岐

サマポケの前半はマップ選択です。プロローグが終わりましたら、マップから発生させたいキャラクターのアイコンを選んでいく形式。

基本的に個別ルートを確定させたいキャラを連続で選んでいけばOKです。(ヒロインによっては、途中で絶対に外せない会話選択肢もあるので注意しましょう)

その他の会話選択肢については、分岐に関係がないものがほとんどです。ここら辺はいつものKeyさんの遊び心です。

ただ、RECORDをコンプするにはセーブ&ロードを駆使する必要があります。

また、物語の前半で笑いをメインに据えることでキャラクターへの感情移入が増し、後半の感動が一際大きくなります。ここら辺の「泣きゲー」の作り方は流石に熟知していますね。

とはいえ、ライターさん達はそこまで難しいことは考えずに、ギャグパートは心の底から楽しみながら執筆していたんじゃないかな、と個人的には思いました。

 

久島鴎ルート 考察

久島鴎

個別ルートはグランドエンディングにつながる伏線が散りばめられています。

  • しろはルート→時の編み人、予知能力
  • 蒼ルート→七影蝶、迷い橘
  • 紬ルート→加藤家とのつながり、神隠し
  • 鴎ルート→七影蝶

この中で謎が残るのが鴎の正体だと思います。

「2度と覚めない眠りについた」と鴎のお母さんは話していて、鴎自身も「遠くに行かなければならない」と本編で語っていました。

私はてっきり鴎は亡くなったものと思っていたのですが、読み返してみると、生死については明確に言及されていないことに気付きます。

蒼ルートや洞窟のシーンを踏まえると、鴎の正体は七影蝶の力だと推測できます。七影蝶が触れた人間には鴎の姿が視えていたのでしょう。

エピローグで羽依里が鴎と再会しているシーンがあります。あれは、

鴎はすでに亡くなっていて、夏が巡り、再び七影蝶が鳥白島に戻って来て羽依里に鴎の姿を見せた。

鴎は深い眠りに落ちていただけで、体調が回復して再会を果たした。

という大きく2つの解釈が考えられ、その判断をユーザーに委ねたという風に考えます。

蒼のお姉ちゃん(藍)も七影蝶の副作用によって深いまどろみに落ちていた眠り姫でした。彼女の事例も踏まえると、②鴎生存の可能性も大いにありますね。

加えて、羽依里は昔『ひげ猫団』を読んだから、初めて訪れるはずの鴎との冒険にも既視感を覚えたという説明でした。

もしかしたら、夏を何度も繰り返していたうみちゃんの七影蝶の副作用も合わさって、余計に既視感を持ったのかもしれません

蒼ルート 考察

空門蒼

蒼のお姉ちゃん(空門藍)は、長い眠りから覚めた時、蒼が今までに体験したことを大まかに把握していました。

彼女はそれを、蒼がいつも寝ている自分に話しかけてくれて、姉妹のテレパシーのようなものが作用して、情報が共有されたと解釈しています。

もしかすると、あの時すでに蒼の体からは抱えきれなくなった七影蝶の一部が溢れ出して、眠っている藍に触れて、経験が供給されたと考えるのが現実的かもしれません。

紬ルート 感想

紬ルート
よく『Summer Pockets』と『AIR』を対比される方がいらっしゃいます。『AIR』をはじめ、夏を代表する作品は数多くありますが、それらの多くは舞台・背景設定が「夏」のお話です。

サマポケはどちらかというと、夏そのものに焦点を当てた物語ですので、両者のコンセプトには明確な違いがあると考えています。

終わってほしくない夏があった。楽しかった夏休みがあった。

そういう日本人が大切にする夏の風物詩や名残りを、個々のストーリーに上手く落とし込んで形にしたのがSummer Pocketsです。

紬ルートで”夏の隙間のような場所、薄明りの中にいるような存在”という一文が出てきます。

これは紬の正体を比喩的に表現していますが、個人的にはサマポケ自体が言いたかったことの代弁でもあるようにも感じました。

 

ALKAルート&Pocketルート 攻略・考察

Keyが今までに培ってきたノウハウを充分に活かしたシナリオだと思います。他の作品で見たことのあるようなシーンが所々あります。

決して使い回しと揶揄する訳ではなく、積み上げてきた技術を適確に使用し、ユーザーを感動させようという意志が伝わってくるものでした。

原案者の麻枝准氏や製作スタッフの方々もおっしゃっていましたが、サマポケにはかなりの覚悟と情熱を注がれたようです。その思いを裏切らない、まさにKeyの集大成とも呼べるルートでした。

感傷的な思いを胸に未来へ羽ばたく形でエンディングを迎えますが、本編にはいくつかの謎も残ります。

  • しろはのお母さん(瞳さん)はなぜ娘の前から姿を消したのか?
  • 七海が時空の狭間で出会った「影法師」とは誰か?
  • 鏡子さんは何者なのか?

ここら辺の疑問について考えたいと思います。

 

しろはのお母さん(瞳さん)の失踪と影法師の正体

鳴瀬しろは

父親が亡くなり、ほどなくして母親の瞳さんも行方をくらませます。まだ幼い娘を残してどうして居なくなったのか。サマポケをやった人なら誰もが持つ疑問だと思います。

こちらは本編中では動機が明かされていませんので、心の推理をしなければなりません。

”子どもしろは”は「お母さんは力を使ってお父さんに会いに行った」と考えますが、七海はそれを否定します。

おそらく父親に会いに行ったというよりは、父親の事故の運命を変えようとしたのではないでしょうか。

家族三人そろって過ごすことが、しろはの幸せであり、瞳さんの願いであり、父親が求めていた日常なのです。うみちゃんと同じように、瞳さんも過去に戻り、失われた幸せを取り戻しに行ったのです。

しかし、それは叶わなかった。

失敗し、「力の代償」によって瞳さんは七影蝶になり現世と虚構の狭間を行き来する存在になります。

うみちゃんやしろはを正しく導くために、瞳さんは自らの意志で時の編み人になったというご意見もありますが、あくまで結果的にそうなったというのが私の考えです。

理由は前述の通り。父親が他界したこと、幼い娘を残していたこと、家族みんなの幸せを願っていたこと、だからです。

ついでに影法師とラストシーンの七影蝶にも触れておきます。あの正体は一体誰だったのか。

おそらくですが、影法師=未来のしろはであり、「未来のしろは」が「子どもしろは」に七海の正体に気付かせ、未来に待っている楽しい夏休みの思い出を教えます。

そして、七海が夜空を見上げるときに、まるでこの先の流れを案じるように語りかけてくる蝶――あれは瞳さんです。

七海は「おばあちゃん」と呼んで、感謝していました。母(しろは)にも祖母(瞳)にも見守られていたんですね。

鏡子さんの秘密

岬鏡子 (2)

蔵を整理する名目で羽依里を呼びつけたのに、一向に手伝わせる気配がなかったり。数々の意味深な発言を繰り返したり。ある意味、本作で一番不可解な言動をしているのが鏡子さんです。

まず鏡子さんや鷹原家、加藤家に特殊な力(未来視、過去へのタイムリープ、時の編み人の関するあれこれ)が備わっているのかという疑問ですが、意味深な発言はあるものの確固たる伏線がありません。

鏡子さんも自身にそのような力は無いことを明言しています。それが嘘の可能性もありますが、誠実で温情な鏡子さんの性格からは考えにくく、嘘をつく理由も見当たりません。

羽依里に蔵整理を手伝わせなかったのは純粋にうみちゃんがいたからでしょう。その証拠に、うみちゃんがいない世界(=Pocketルート)では蔵整理を手伝うことができています。

鏡子さんと瞳さんは親友でした。親友だからこそ、力の事や、未来の夏にうみちゃんが来る事、そのうみちゃんを気にかけてほしい事などをお願いしていたんだと思います

羽依里くんが既視感を抱いている点については、うみちゃんがタイムリープを繰り返した副作用であり、羽依里くん自身に特殊な力が備わっていた訳ではないと思います。

感動ストーリーの裏側でいくつかの謎を残したまま終わるSummer Pockets。今度ファンブックも発売されるようですので、ここら辺の謎も解明されるのを期待したいです。

 

Summer Pockets 評価

Keyのノウハウを凝縮した感動シナリオ。反面、能動的に考察しないと全てを楽しめない仕様になっているSummer Pockets。

最後の最後までユーザーを楽しませる工夫が凝らしてありました。この点は『Rewrite』に近いものがあります。

『Rewrite』も地球、文明、人類などに向けた強いメッセージが含まれている一方で、プレイヤー自身が考察をして初めて真価を発揮する作品でした。

では、どうして考察の余地を残すような仕様にしたのでしょうか。これは持論になります。

原案の麻枝准氏は制作発表時に、Summer Pocketsを他のゲームで例えるなら『ぼくのなつやすみ』という風に表現されていました。なるほど、「懐かしい夏」「過ごしてみたかった夏」が見事に表現されています。

ひと夏の1ページ。その裏ではきっと別の夏が物語られています。自分が他人に影響を与えたのと同じくらい、知らないところで誰かの世話になっていたり、助けられていることもあります。

時間が経って記憶の細部は風化していきます。でも、ある時、ふとした瞬間に「子どもの頃の夏」を思い出すときがあります。その時、自分が過ごした夏とは別の場所で、「もうひとつの夏」がきっとあったのだろうと思いを馳せる――そんな情緒を織り込めたかったのではないでしょうか。

鳥白島

思い出はできましたか? 終わってほしくない夏になりましたか?

それでも、時間は無慈悲に過ぎて、楽しかった記憶はその鮮明さを欠いていきます。

それでも、いつでもいいから、振り返れば帰る場所がありますよ。そして、過去に負けないくらい楽しい思い出を作ってくださいね。

そんなメッセージをサマポケは残してくれました。

ご精読ありがとうございました。鍵っ子に限らず、どなたにもオススメできる作品なので、未プレイの方は是非遊んでみてください。

(2019/03/05)

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