【レビュー・考察】月の彼方で逢いましょう

月の彼方で逢いましょう OP

tone work’sさんから発売されました『月の彼方で逢いましょう(つきかな)』をプレイしてみた感想記事です。

結論から言うと、やってよかったです!

が、はじめてtone work’sさんの作品に触れるという方にはおすすめしません。この点についてはあとで説明しますね。

最初に総評をさらっと書いて、次にキャラクター別の感想を紹介します。重要なネタバレはしませんが、一部どうしてもネタバレを避けられないものもありますので、未プレイの方はご留意ください。最後の考察はがっつりネタバレを含みますので、プレイ済みの方のみご覧ください。

また、引用画像はどれも製品版から立ち絵に限りお借りしています。

それではいってみましょう!

全体感想

シナリオ ★★★★

イラスト ★★★★★

音楽   ★★★★★

システム ★★★☆☆

tone work’sさんの作品は今回で4つ目になります。こちらのブランドの代名詞は、なんといっても「スクール編(学生編)」と「アフター編(社会人編)」を紡いだ濃密な恋愛模様が描かれていることです。アフター編は後日談やおまけ程度ではなく、じっくりとヒロインとの成長が盛り込まれています。

ヒロインとの恋路を丁寧に描くという当ブランドの特長を踏襲しつつ、新たな試みを取り入れた『つきかな』は間違いなく称賛に値します。

シナリオ面で星をひとつ減らした理由はいくつかありますが、ひとつはクリアまで非常に長いことです

長所と短所は表裏一体です。恋愛の過程がじっくり描かれるのはtone work’sさんの最大の魅力なのですが、クリアまでの時間は相当かかります。平均的なフルプライスゲームの1.5倍~2倍くらいの文量があります。とりわけ社会人におすすめしたいゲームなのですが、時間がない社会人にとっては重量級のゲームですね。

また、個別ルートによって書いているライターさんが異なりますが、ルートによって誤字脱字の量に差がありました。たとえばメインシナリオはそれほど見受けられなかったのですが、聖衣良ルートはちょこちょこ脱字(とくに助詞の抜け)が目立ちました。そんなに神経質になるレベルでもないのですが、重要な台詞に限って脱字がありましたので個人的に気になってしまいました。

月の彼方で逢いましょう 聖地 背景

次にCG・グラフィックについてです。

攻略ヒロインが7人もいるだけあってCGの数もボリューミーです。灯華、うぐいす、雨音は20種類ほどあって、差分もかなりあります。聖衣良とサブヒロインは若干少なめですが、ストーリーの尺を考えると妥当なところ。

イベントCGに関しては雨音が印象に残るものが多かったです。花火のシーンとバイクの二人乗りのシーンはとてもよかったです。

『つきかな』の聖地は江ノ島・藤沢となっています。本編でも水族館、展望灯台、江ノ電、龍恋の鐘などが登場し、ストーリーと深くリンクしていたり、重要なシーンをさらに印象付けていました。

地元の人にとっては愛着が持てますし、『つきかな』を遊んで聖地巡礼したくなる人もいるはず。アニメやゲームで神奈川が舞台の作品って多いですよね。

月の彼方で逢いましょう サウンドトラック

BGMは「Morning Glory」がお気に入りでした。これを流しながら夏の海岸沿いをドライブしたくなります。他の楽曲も上手くまとまっていましたし、感動的な場面で主題歌のPiano Ver.が流れたりと演出面もバッチリでした。

最後にシステム(コンフィグ)です。これはあまり快適とは言えませんでした

まずセーブ数が少ないです。セーブ可能数は200個あります。普通のゲームならこれで十分すぎるのですが、先程も言いましたように、つきかな本編は非常に長いです。攻略ヒロインはサブも含めると7人。うちメインヒロインは「スクール編」と「アフター編」があります。とてもじゃないけど200じゃ足りません。セーブする箇所を吟味しながら進めるのがストレスでした

加えて、「前の選択肢に戻る」機能はあるのですが、「次の選択肢にジャンプする」機能などはありません。長編だからこそ任意の地点に飛べる機能は欲しかったです。今後の作品ではジャンプ機能、フローチャート機能、チャプター機能などを実装してほしいです。

また、エンディングに音が入らなかったのも残念ポイントです。このバグが起こったのはもしかしたら私だけかもしれませんが、エンディングでテロップが流れている時に曲の音が聞こえませんでした。この症状は全ルートに起こりました。どのエンディングも素敵な終わり方なのに、エンディングが無音だったせいで余韻に浸ることができませんでした。

と、いった感じで。全体的に見れば平均点80点以上を叩き出す優等生作品なのですが、おしいところで手が届きませんでした。

結論:極めて良作だが、傑作まではもう一歩!

ヒロイン攻略

さて、次にキャラクターを攻略してみての感想を書いていきます。

新谷灯華(スクール編+アフター編)

新谷灯華

主人公、黒野奏汰のクラスメート。猫みたいに気まぐれな性格。遅刻癖、休み癖があり、校内ではいろいろと良くない噂もあるミステリアス少女。

ネタバレになりますが、スクール編では灯華と恋人関係になれません。奏汰は最後の最後で自身に芽生えた恋心に気づきますが、それが実を結ぶことはありません。多くの謎を残したまま、灯華と離れ離れになります。

灯華と別れて8年後。大人になった奏汰は、ひょんなことから灯華が学生時代に使っていたスマホを見つけます。これはシトロン社が開発したエンデュミオンというスマホ。評判が良くなく、発売からわずか一年で姿を消しますが、このエンデュミオンと通信規格D-WAVEが重なることで過去と繋がるデバイスへと変容します。過去の自分にLIMEでメッセージが送れるようになるのです。

過去の自分とつながった奏汰は、灯華の秘密を突き止め、彼女を守るように助言を与えます。

そのおかげで、過去の奏汰と灯華の距離は縮まっていきます。現実(=社会人の奏汰がいる世界)では灯華の行方は知れず、叶わなかった恋を後悔することしかできない。でも過去の自分は灯華とうまくやっている。どこか嫉妬を覚えながらも、それでも彼女が無事でいてくれるならと、奏汰は過去へメッセージを送り続けます。

しかし、過去が良い方向に変わっていく水面下で、徐々に現実世界にも影響が出始めて……というストーリーです。

なので灯華ルートは、学園編で恋人になってアフター編で甘酸っぱい同棲生活を送るという従来のtone work’s展開ではなく、学園編とアフター編があたかもワンセットで真実を追究するという流れ

とくにアフター編はサスペンス要素が強くて、人によっては怖いなって感じるかもしれません。これは今までのtone work’s作品にはなかった温度感ですね。『星織ユメミライ』『銀色、遥か』の感覚でいくと意表を突かれます。

そして、クライマックスの過去と未来を往復する「加速度」がヤバい。それまでの過程を丁寧に描いているおかげでクライマックスの加速感が生まれています。刻一刻と変わる過去と奏汰の焦燥感がすごく伝わってきて、思わず一気にプレイしてしまいました。

難点としては、大人バージョンの灯華が本当にラストにしか登場しないことです。立ち絵は皆無で、CGのみの登場になります。成長した灯華をじっくり見たいという人の期待には添えない内容となっています。

日紫喜うぐいす(スクール編)

日紫喜うぐいす(スクール編)

文藝部の先輩。いわゆる「読む専」で、いつも部活に一番に顔を出しては窓辺で本を読み、部活メンバーから書評を頼まれたりと信頼の厚い先輩。凛々しくクールなキャラで、もしもこれが冒険ファンタジーならお姫様を護るナイト役が似合いそうな風格です。

美少女ゲームのクール系ヒロインは無数にいますが、「こんなかっこいい高校生いる!?」というレベルで群を抜いています。

奏汰は昔からうぐいす先輩に憧れを抱いていました。それは恋愛感情に近い尊敬の気持ちです。以前からの想いが叶うルートですが、これが一筋縄にはいきません。

うぐいす先輩にはある秘密がありました。そのせいで他人と特別な関係になるのを恐れています。一見すると筋が通らないうぐいすさんの行動に、奏汰は終始翻弄されることになるのでした。

日紫喜うぐいす(アフター編)

日紫喜うぐいす(アフター編)

6年後、大人になった二人は同棲生活をはじめます。奏汰は小説家兼ビブリオテイク(学生時代のバイト先)の店長になっていて、うぐいすさんも一緒のお店で働いています。

前半は砂を吐くような(死語)イチャイチャを見せてくれますが、後半はけっこうシリアスです。シリアスというか、切ない感じですね。CLANNADが好きな人はハマると思います。

灯華ルートが欠けているものを埋めていくストーリーなら、うぐいすルートは一度掴んだものを手放していく話。それを月の満ち欠けに絡めた描写が見事。構成的にも文章的にも非常に完成度の高いシナリオでした

また、聖衣良や月ヶ洞きらり、円と賢斗などなど……仲間の支えが心にしみるお話でもあります。特にきらり先生の株が爆上がりします。ただのお色気お化けじゃありませんでした。

若輩者ながら自分も創作をしているので、きらり先生やうぐいす先輩の言葉が刺さる場面がけっこうありました。地の文も思わず共感してしまう部分がたくさんあって、美少女ゲームユーザーとしてだけではなく、ひとりの物書きとしても学びがたくさんありました。

佐倉雨音(スクール編)

佐倉雨音(スクール編)

日本とアメリカのハーフ。最初は口数も少なく、話題や話し方も小難しくとっつきづらいキャラ。PCの授業で同じグループになったり、奏汰のバイトを手伝うことになったりして少しずつ仲良くなっていきます。距離が縮むにつれて彼女が重度のゲーム廃人であることや、中二病を患っていることが判明します。

他作品で恐縮ですが、『中二病でも○がしたい!』の小鳥遊○花ちゃんのイメージに近いです。近いと言うか、眼帯はしてないだけでイメージはそのままかもしれません。

雨音と書いて「レイン」と読みます。キラキラネームだけど、大切な由来がちゃんとあって、心が温かくなります。全ルートプレイしてみて、雨音はとくに幸せになってほしいなって強く思いました。

後半はとにかく「早く付き合っちゃえ感」が半端ないです笑。というか、告白していないだけでもうほとんど付き合っているような焦れったいストーリーを魅せてくれます。

余談ですが、恥ずかしがる時に指で小さく✕印をつくる仕草が可愛かったです。

佐倉雨音(アフター編)

佐倉雨音(アフター編)

学園を卒業した雨音と奏汰は同じ大学に進学。あっという間に時は流れ、就職。二人は同じ屋根の下で暮らすようになり、結婚を誓います。アフター編は、そんな同棲生活~結婚式までをじっくり追うもの。

これぞtone work’sという流れですが、雨音アフターはひと味違います。それにはどうしても彼女の家庭事情を説明する必要があります。ここだけネタバレをご容赦ください。

雨音の両親は、彼女が小さい頃に他界しています。父はアメリカの大手スマホ企業シトロン社の元CEOでした。ちなみに本作の話題となるエンデュミオンは雨音の父の遺作と呼ばれています。

母親は病気によって命を落とします。妻に先立たれた父は開発に没頭するようになり、雨音のことをかまってあげなくなりました。

父が研究に没頭し家事を丸投げしたから母の病気発見が遅れたんだ――雨音はそう考えるようになり、父を憎むようになります。娘と仲直りできないまま、やがて父も亡くなります。

そんな雨音でしたが、奏汰やネットの人たちとの交流を経て、心境が少しずつ変化していきます。憎むなら、ちゃんと父のことを知らなければいけないと。雨音は父が創業したシトロン社の日本支部へ就職することを決意します。

結婚式の準備をする一方で父の本当の気持ちを探るのが雨音アフターの内容になっています。

ちなみに、雨音の父ポール・グレイはステ○ーブ・ジョブズ氏をモデルにしていると思われます(明言されていませんが、誕生日が同じこと、敬虔な仏教徒だったこと、晩年オカルトにハマっていたことなど、類似点が多いです)

灯華・うぐいすルートでは過去を変え、未来を変えようとします。本ルートのラストでも過去を変えるかどうかの重い選択を迫られます。奏汰が言った「結婚を約束した大切な恋人がいて、学生時代からの大事な仲間がいて。それをぜんぶ捨ててまで変えるってなると、やっぱり考えてしまいますね」という台詞がなかなか深いなと思いました。

人は「失ったもの」と「今の満足できていない部分」にばかり目を向けがちです。だから今でもタイムリープモノや過去改変モノが支持を得ているのでしょう。対して、雨音ルートは「過去があるから今がある」ということを教えてくれるシナリオで、『つきかな』が最も伝えたいメッセージでもあると感じました

倉橋聖衣良(スクール編)

倉橋聖衣良(スクール編)

わかったことがあります。私はたぶん、聖衣良ちゃんを攻略するために今までプレイしてきたということです。キャラデザも一番好きですし、白月かなめさんの声も可愛さと幼さがあるんですけど、かといって変にきゃぴきゃぴしすぎていなくて、ちょうど良かったです。アフター編の聖衣良の声は子ども時代よりも落ち着いたものになっていて、声だけでも成長が感じられるものでした。やっぱり声優さんってすごいです。

奏汰の親戚で、妹みたいな存在の聖衣良。大人に憧れていて苦いコーヒーを我慢して飲もうとしたり、し○ちゃんみたいな言い間違いをよくしたりします。子ども扱いされるのが嫌で、背伸びをしたくなる聖衣良ですが、そこにもちゃんと理由があって……というお話です。

前編はめちゃくちゃ短いです。もちろん前編では「本番」はありません笑。灯華ルートのようにドラマチックなイベントが起こるわけでもありません。一応メインヒロインの括りですが、ストーリー内容はサブに近く、日常の恋愛に焦点を当てたものでした。

個人的にはもっと小学生聖衣良ちゃんを見ていたかったので、前編の短さだけが唯一残念でした。

倉橋聖衣良(アフター編)

倉橋聖衣良(アフター編)

高校生になった聖衣良は、専門学校の体験入学と夏期講習のために奏汰の家に下宿するようになります。居候するだけだと申し訳ないからと、家事を積極的に手伝ってくれるようになります。仕事から帰ると「おかえりなさい」と癒やし笑顔で出迎えてくれるし、料理も洗濯も完璧!

こんなお嫁さんが欲しい!

見た目もすっかり大人になりました。うぐいす先輩はもともと大人びたキャラなので、正直アフター編になってもそれほど時の流れって感じなかったのですが、聖衣良は一番変化が楽しめました。

「スクール編」と「アフター編」でキャラ容姿の変化が楽しめるのはtone work’sの最大の特長ですよね。

聖衣良は小さい頃からファッションデザイナーになりたいという夢を持ち、それに向けて努力を重ねてきました。一方、小説家の夢が叶わなかった社会人の奏汰は雑誌の編集部に落ち着きます。奏汰は今の仕事を「執筆という夢を諦めきれなかった未練」だといいます。だから、子どもの頃から自分の夢に向かって邁進し続けている聖衣良が眩しく感じ、同時に自分が惨めに思えてしまうのです。

しかし、小説家を目指すきっかけになったのが実は聖衣良だったと知り、奏汰も自身を奮い立たせます。同時に、「妹」扱いしてきた聖衣良を一人の「女の子」として意識するようになっていくのでした。

ちなみに、本作のテーマである「過去と未来をつなぐスマホ」は灯華、うぐいす、雨音に関係する話であり、聖衣良をはじめサブヒロインルート(霧子、きらり、栞菜)には出てきません。後者は日常恋愛を描いたハートフルな内容で、メインのシナリオが濃い目の味付けなだけに全体でちょうどいい塩梅になっていると思います

松宮霧子(アフター編のみ登場)

松宮霧子

奏汰が勤める「よつば出版」漫画部の編集長。

自身のポリシーや仕事への心構え、社会人としての自覚などを教えてくれて、大人な発言が随所に見られました。松宮さんから部下である奏汰へアドバイスしているはずなのに、まるで画面を通り越して自分に語りかけられているような気分にもなりました。私個人としても、人生の先輩である松宮さんからは多くの心に刺さる言葉と激励をもらいました

栞菜ルートでは悩む奏汰に親身になって相談に乗ってあげて、クライマックスでは栞菜との恋路を援護するような場面もあり、人として松宮さんはすごく好きでした。

35歳独身でそろそろ結婚を考えなければいけない歳ですが、仕事一筋でやってきたため色恋沙汰の話は皆無。結婚を迫る母親を欺くために、成り行きから奏汰と擬似的な恋人関係を演じるようになります。

母親を納得させるための偽りの恋人ごっこでしたが、デートを重ねるたびにそれが本物恋心に変わっていって……というオーソドックスな内容。ただ、サブヒロインといえどそれなりの文量があって、満足できる充実度。

バーでお酒を飲んだり、ビリヤードで勝負したりと、大人の恋が楽しめるルートでした。

月ヶ洞きらり(アフター編のみ登場)

月ヶ洞きらり

大学生の時に新人賞を受賞。その後もヒット作を生み出し続ける天才作家。その麗しい美貌と歯に衣着せぬ物言いで、話題に事欠きません。

言動は極めて妖艶で、蠱惑的です。隙きあらば男に手を出そうとして、その筋の話は出版業界でも有名とのこと。

かなりの自信家で大口も叩くのですが、それを裏切らない実績と実力の持ち主。でも、まったく嫌な感じがしないのが不思議なところ。

うぐいす先輩の感想でも書きましたが、人間的に優しい一面もちゃんとあります。落ち込んでいる奏汰を鼓舞したり、うぐいすさんと奏汰が旅行に行けるように画策してくれたりします。

松宮編集長とはまた違った角度から大人の意見を言ってくれたりもします。

相思相愛の甘々な関係というよりは、最後まで彼女のペースに惑わされますが、深いところで奏汰のことを信頼していて、これからの二人の進展が楽しみになるエンディングでした。ただ、サブヒロインの中ではわりと短めのストーリーです。

岬栞菜(アフター編のみ登場)

岬栞菜

少女漫画家。才能はあるもののデビュー作以降なかなかヒット作に恵まれず、読者アンケートでも微妙な順位でくすぶっています。

ある時、栞菜の担当が体調不良で離脱することになり、ヘルプとして奏汰に白羽の矢が立ちます。

栞菜の不調の原因を、奏汰はリアリティの欠如だと見抜きます。彼女は恋愛漫画を描いていますが、内気な性格で、女子校育ちということもあり、恋愛経験がまるでありません。

これは、栞菜の人気を返り咲かせるまでの奮闘日記です。

個人的に、聖衣良ちゃんに次いで二番目に好きなキャラクターでした。純愛ゲームの王道ヒロインという感じで、普通のゲームならメインヒロンでも十分通用するレベルでキャラが立っていました。

オタク気質な面もあって、自分の好きな作品を熱く語ってしまい、「……はっ!」と我に返って恥ずかしがる様子が可愛い。

余談ですが、私は鈴谷まやさん病にかかっているので、まやさんの柔らかい天使ボイスも相まって文句なしのキャラでした!

初めてのtone work’s作品としてはオススメしない

『つきかな』はボリュームもあり、イラストも音楽もクオリティは高い。攻略可能なキャラクターは小学生から大人のお姉さんまで揃っているので守備範囲も広い。気にいるヒロインがきっと見つかるはず。

サブヒロインルートはオーソドックスな展開が多いですが、メインのシナリオがしっかり目だからこそ、純愛ゲームの和やかな雰囲気を楽しめるルートになっています。シリアスから純愛ゲーまで幅広く味わえます。

優等生な作品なのですが、『星織ユメミライ』『銀色、遥か』のどちらか(できれば両方)をプレイしてから『つきかな』をやることをおすすめします。そうじゃないと本編の進化 / 新たな試みが十分に理解できないからです。

『つきかな』はヒロインたちの「スクール編」と「アフター編」を描く従来のスタイルを受け継ぎつつ、SF要素やサスペンス要素を加えたテイストになっています。この良さは、過去作を遊んだからこそ味わえるのです

ちょうどいい機会で、『星織ユメミライ』のPerfect Editionも発売されました。もしかしたら『銀色、遥か』の新作パッケージも今後発売されるかもしれません。お金と時間に余裕がありましたら前作をプレイしてから『つきかな』を遊びましょう。

社会人に勧める理由

――もし、未来と過去をスマホで繋げたら、あなたはどんな後悔をやり直す?

それが、『月の彼方で逢いましょう』のコンセプトです。過去を変えて、自分たちの望む未来にするという作品が蔓延る中で、この作品から一貫して伝わってくるのは、自分が生きた過去を捨てるな、忘れるなというメッセージ。これは『STEINS;○ATE』と似ています。シュ○ゲが好きだった人はきっと気に入るはず。

また、tone work’s作品は社会人のリアルな生活と悩みが描かれています。本作の主人公の黒野奏汰は小説を書くのが好きで、将来は筆を握ることを本心では考えていました。しかし、新人賞にいくつか応募してみるものの手応えは芳しくなく、小説家で食べていくことは叶いませんでした。

それでも執筆に携わる仕事がしたいという思いから、出版社の編集部に入社し、ライターや小説家を支える立場として日々を送ることになります。

誰だって好きなものを仕事にできたら一番幸せです。でも、みんなが好きな職に就けるわけでもなく、やりたくない仕事に忙殺されている人も多いでしょう。

これから社会に出る人が本作をプレイすれば「あ~やっぱり社会人って大変なんだぁ~」と感じますが、「でも、悪いことばかりじゃないかも」とクリア後は思うはず。

そして、今会社で働いている人がプレイすれば「自分にもこんな時代があったなぁ」と懐かしさを覚え、人によっては「昔諦めた夢だけど、もう一度リトライしてみようかな」と勇気をもらえることでしょう。

人によって、

  • 走ってきた道のり(過去)
  • 今、走っている地点(現在)
  • 目標としているゴール(未来)

は違います。tone work’sさんの作品はこれら3つの地点を再認識させてくれます。なので、新社会人への激励として、あるいは今第一線で頑張っている人への小休止として、おすすめします。

おそらく『つきかな』もPS4版やSwitch版などのコンシューマで発売されると思いますので、今後とも期待ですね。

考察:灯華の消息について

最後はネタバレ全開なのでプレイ済の方のみご覧ください。灯華の行方について少しだけ考察します。

灯華は奏汰に突然の別れを告げた後、学校からも姿を消します。社会人になって同窓会の話が持ち上がっても灯華には連絡がつかないし、他のルートでも一切登場しません。

スーパームーンの未来と過去の統合により、彼女は再び奏汰の前に現れます。その間、彼女はどうなっていたのかという疑問が湧きます。

結論、灯華は一度命を落としてしまった可能性があります

そもそも、エンデュミオンで過去と繋がるには「送り手」「受け手」「中継役」が必要という話でした。灯華ルートの場合、送り手は現在の奏汰、受け手は過去の奏汰、中継役は灯華でした。

雨音ルートによれば、中継役は宇宙原意識(魂の還る場所)にいて、故人である必要があります。つまり、過去と未来の奏汰を結び中継した灯華は亡くなっていたことになります。

明言されていませんが、うぐいすルートで奏汰が過去と繋がれたのは亡くなったうぐいす先輩が中継し。雨音ルートで父親(グレイ)と母親(アイナ)にメッセージを送れたのは両親のどちらか、あるいは両方が宇宙原意識から先進波を中継したと思われます。もしくは灯華がすべてに介入していて、奏汰とうぐいす、雨音親子を繋いだという考え方もできます。

灯華はラストで致命傷を負い、その後の生死については言及されていませんが、もしも過去の灯華が亡くなっていたらスーパームーンの統合によって未来に灯華はいないはず。だから、致命傷は負ったけど命に別状は無かったことになります。

しかし、過去と繋がるには故人の遺志が必要なので、現実の方の灯華は一回亡くなり、蘇った。つまりは、うぐいす先輩と同じロジックが働いていることになります。

では、なぜ灯華が命を落としたのかという疑問が生まれます。ここからは完全に想像です。

奏汰と恋人になれなかった世界では、灯華は復讐の相手である増岡に会いにいきます。本編では奏汰がいたから話がこじれましたが、灯華と増岡だけなら互いに落ち着いて話ができたはずです。おそらくそこで増岡の病状を知り、復讐を思いとどまったのです。

復讐を諦めたなら、心を改めて奏汰に再会することもできたはずです。が、しませんでした。恋人になる資格がないと思ったのでしょう。だから、スマホの動画にメッセージを残すなんてやり方しかできなかったのです。自由奔放に見えて、女の子らしい部分をちゃんと持っていますから、灯華は。

仮に奏汰との絆をもっと深められていたら、それこそ未来は変わったかもしれません。しかし、灯華にとって復讐がすべてだったのです。復讐のために生きてきたのに、その敵が病に冒されていると知って、ひどく落胆したと思います。目的が頓挫し、奏汰を拒絶して、生きる希望を見失いました。こんな自分じゃ奏汰とは釣り合わず、付き合う資格なんてないと考えたのでしょう。

浜辺で「お月様の彼方にいっちゃったら…追いかけてきてくれる?」と質問する印象的なシーンがあります。あの台詞は、奏汰の本心を尋ねる他に、復讐劇が失敗したらどうしようという不安や、自殺の可能性などの、悲観的なニュアンスも含まれていたのではないでしょうか

という感じで、現実の灯華は悲劇的な結末を迎えた可能性があります。

思い返せば、本作は灯華が自分の頭に3Dプリンターで作った銃を突きつけている場面から始まります。最初は「え、どういうこと?」と頭の中が疑問符でいっぱいになりまりましたし、個別ルートに入ってもそんなシーンは一切出てこないので、どこの時間軸のことなんだろうとずっと考えていました。あれは、奏汰の告白を断り、復讐も虚しく終わってしまった後なのです。なにもなくなってしまい、やるせない気持ちをどこにも昇華できなくなってしまった末路なのです。

冒頭の灯華の声はひどく疲れて悲しみに暮れていました。彼女の声色がすべてを物語っていましたね。なんか、哀しいですね。

このように、灯華ルートは心情を想像しながらプレイすると新たな真実が隠されていることに気づきます。他のキャラ(たとえば、うぐいす先輩)も良い意味でも悪い意味でも本心を隠すのが上手なので、心情を推理しながらもう一度プレイすると新しい発見があるかもしれません。普通に遊んでも深読みしても楽しめる作品でした。

いずれにしても本作で興味が出たので、時間ができたら続編の『SweetSummerRainbow』も遊んでみたいと思います。

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